年を取ったせいか分かりませんが万年筆と青インクが妙に欲しくなって3年前に買いました。どうせ買うなら日本製が良いので探して見つけて使い続けています。
外国の万年筆は横文字を書くようにペン先が作られているので、縦書きの日本文字には合わないのです。便せんや原稿用紙に縦書きするにはやはり日本製を選ぶことになるのです。
実際に試し書きするとわかります。日本製は書きやすいのが素人でもわかるのです。
万年筆の不思議な魔力
万年筆はずっと見ていても飽きません。全体が美しいのです。
ペン先は18Kの金で出来ていて美しい光沢を放っています。そしてペン先に刻まれた彫刻ともいえる繊細な模様がなんとも言えない美しさと歴史を感じます。
ペン先は2つに割れていて、先端は少し丸くなっていて、そこが紙に触れてインクを落としていくのです。
ペン先の丸いふくらみが、書いているうちに持ち主の癖に馴染んでくるので、まさにアイデンティティーを刻み込むことができる道具なのです。
使えば使うほど滑らかになり、自分好みの書き味を作ることが出来るのも魅力なのです。
万年筆の外見は重みがあります。軽い素材なのですが使いこむほどになぜか光沢が深くなります。金で装飾した飾りは特に微妙な輝きを出し始めるのは3年位経ってからです。それまでは、隠しているかのようでわたしは気付きませんでした。
朝起きると最初に万年筆が入っている皮のケースから取り出して、ノートに日付を書き込みます。今日の気温、天候や気分など自由に1ページを万年筆に与えます。
すると、万年筆は自由を得たようにそのスペースを使って文字を書き始めるのです。文字の大きさや、濃淡、形など、どれ一つとして同じものはありません。
人間社会のようで面白いのです。いろんな形があって、文字の居場所は様々です。スペースのすみっこに小さく書くときもあれば、堂々と真中に書くときもあります。なんの決まりも無く、文字は自由に書かれていくのです。
その滑らかなペン先の滑りは、一度体験したら魔力にはまってしまします。
朝起きてから万年筆で最初に書く文字は今日の歴史で初まりなのです。
青インクの魔法
なぜ青インクを選んだのか、その理由は「青の魔法」です。青い色にはなにか考える力が潜んでいます。
学生時代には論文を考えたり、会社で企画を練る時は必ず青いボールペンでした。青は思考するときに不思議な力をくれます。
自分の家の設計を書いたときも青で、定年までの計画を練った時も青で、手紙の殆どは青のインクでした。手紙の黒色はキツイのです。
パソコンのディスプレー上でバーチャルな文字ばかり見てきたので、万年筆と青インクで実態のある文字を書くと不思議な安ど感を味わいます。
自分で書いた自分だけの世界の中には、世界で1つしかないユニークな文字だけが残るのです。自分だけのフォントです。何年も何十年も万年筆を青インクで書かれた文字は残るのです。
デジタルで保存した文字とは違い、アナログなリアルな人生の文字が残るのです。
万年筆に青インクを入れる技
万年筆に青インクを補充するときは、技がいります。万年筆のインクは使い捨てのカートリッジでっはなく、手動のスポイト式を選びました。
インクが無くなると、万年筆を青インクの入ってボトルにペン先を入れて、スポイトで吸い上げるのです。何回かスポイトを指でつまんだりするとインクがビンから吸い上げられて万年筆に取り込まれる仕組みです。
これがまた技がいる瞬間です。万年筆のペン先をインクのビンに入れすぎるとペン先がインクでまんべんなく汚れてしまいます。だから、ペン先が半分位インクのビンに沈むようにしてスポイトで吸い上げるのです。
そして、最後にティッシュできれいにインクを拭いて完了です。
青インクは「月夜」という名前がついています。月夜の青い世界をイメージした色でとても落ち着きます。
もう、毎日3年も使い込んでいます。
万年筆の魔力に取りつかれた話でした。
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